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面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ) (目取真俊短篇小説選集3)
本, 目取真 俊
によって 目取真 俊
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内容紹介 「うちは答えたさ。もういいよ、って。これ以上哀れしなくていいよ、って」――現世にもどることを拒んだ魂の一人語り「面影と連れて(うむかじとぅちりてぃ)」。米兵の幼な子を殺害後、自らに火を放つ主人公を追った衝撃の掌篇「コザ/『街物語』より(希望)」。「慰安婦」を強いられた女と徴兵を拒否した青年との愛を重層的に紡ぎだす「群蝶の木」。首を失った少年兵が夜の街を疾駆する「伝令兵」……。 人間の悲しみ、不安、屈折、憎悪、残虐さをも剔抉する作家の視線の先にあるものは――。魂を揺さぶる12篇を収録。(単行本未収録作品4編) 出版社からのコメント 〈平和を愛する美しい癒しの島〉のイメージと裏腹に、戦争と支配の歴史に翻弄され、いまだ悲しみの癒えない島、沖縄。そこに住む人びとの生の喘ぎを、かすかな息遣いをも伝える傑出した想像力で紡ぎ出す作家の、その幻想的かつリアリティに迫る作品世界を全3巻に集成。単行本未収録作品12篇を含む中・短篇から掌篇までをほぼ網羅する全33篇を発表年順に収録するシリーズの第3巻、完結編。 著者について 1960年 沖縄県今帰仁(なきじん)生まれ。琉球大学法文学部卒。1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。1986年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で第12回新沖縄文学賞受賞。1997年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞。小説の他に時事評論集『沖縄「戦後」ゼロ年』(日本放送出版協会)、『沖縄 地を読む 時を見る』(世織書房)等。新聞や雑誌にエッセイ・評論などを発表。ブログ「海鳴りの島から」。 著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 目取真/俊 1960年、沖縄県今帰仁(なきじん)村生まれ。琉球大学法文学部卒。1983年「魚群記」で第11回琉球新報短編小説賞受賞。86年「平和通りと名付けられた街を歩いて」第12回新沖縄文学賞受賞。97年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000年「魂込め(まぶいぐみ)」で第4回木山捷平文学賞、第26回川端康成文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 続きを見る
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この短篇集で最も気に入った作品を紹介しよう。「署名」(一九九九年)これはホラー小説の傑作だとおもった。産休で休んでいる教師の補充として臨時教員として勤めている主人公に、同じ団地に住むやはり教員志望の青年に「野良ネコの駆除を要求する署名」の協力を頼まれたことから事件は始まる。その青年は団地内の住民のことをおどろくほど把握していて、野良猫に餌をやっている母子をきつく注意する現場に出くわす。そして無理やり署名活動につきあわされ、ドアをガンガンたたいて強引に署名をもらう青年にたじろぐ。そのうち枝にぶら下がった猫の死体を見つけて仰天し、青年を問い詰めると、「沖縄では昔から、ネコが死んだらああやって木に吊るすんですよ」という。あれは供養だと。主人公は青年に「署名も協力できません」という。その後、釣り針を忍ばせた餌にネコが引っ掛かり、テグスがネコを何重にも縛りつけながら自分の部屋のドアノブにくくりつけられていた。驚いた住民がでてきて、犯人が主人公だと決めつけ追及される。真犯人は署名を頼みに来た青年だというが、団地の住民は青年はあなたに脅かされていた、そんなことをやる人間ではないと、口々に青年を弁護する。主人公は怒り狂って青年の部屋のドアをたたく。すると、「出ないでしょう、当り前ですよ。あんたのことを恐がって、北部の実家に帰ってるんだから。しばらく前から、あんたに付きまとわれて困るって、おれの部屋に相談に来たこともあったんだから。自分の犯罪を他人になすりつけるなんて、名誉棄損ものだよ」「あの人は親切なんですよ。ネコだって可愛がっていたし、あなたみたいな変質者と一緒にするなんて・・・・・・」と非難される。ある日、校長に呼ばれて校長室まで行くと、動物虐待の張本人は教師の資格あらずというような内容の投書が写真付きで送られてきていた。あの青年の仕業だと思ったが、事を荒立てることは得策でないと考え、心当たりはないという。校長から、本採用になれるかどうかの大事な時期だから自重してほしいと諭される。それは教員採用試験に落ちた青年の嫉妬心からかもしれない。青年の悪意の深さにたじろがないわけにはいかない。いつの間にか団地の住民を抱き込んだ青年の手腕と、罠に陥れられた主人公の持って生きようのない怒りがあざやかに表現されている。日常どこでも起こりかねない事件だけに心をとらえられた。主人公は「もういやがらせに黙っているつもりはなかった。」と、たたかう決意をして作品は終わる。
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